修正申告によるペナルティ③

前回、延滞税(延滞金)について解説しましたが、今回はその補足です。

利子税と延滞税の相違点

前回記事で触れた通り、延滞税等の税率は以下の通りとなっています。

国税地方税
延納、納税猶予
又は延長に係る期間
1.6%1.6%
上記以外2.6%(8.9%)2.6%(8.9%)
(※2018年1月1日~2020年12月31日までの税率)

表に記載の通り、延納や申告期限の延長などの場合には、

その期間については異なる税率が適用されます。

これを国税の場合には利子税と呼んでおり、利子税の発生期間については

延滞税は課されないこととされています。

因みに、地方税の場合にはいずれも「延滞金」という名称で、

特段区分されておりません。

この利子税等は、税率が異なる以外に、法人税法・所得税法上の取り扱いの違いがあります。

附帯税については、罰則金としての性質上、基本的には法人税・所得税の計算上、

税務上の費用(経費)として取り扱うことが出来ませんが、

利子税等については、費用(経費)として取り扱うことが認められています。

税金が還付される場合の利息

税金の支払が遅れた場合に、延滞税等の利息が付加されますが、

税金の還付を受ける場合にも、還付額に対して利息が付きます。

これを税務上は還付加算金と呼んでいます。

還付加算金の税率は、基本的に利子税等と平仄が合わせられていますが、

令和2年の税制改正により、市中金利の実勢を踏まえ、これらの税率について

令和3年1月1日以後の期間について、「1.6%」から「1.1%」へ変更されます。

還付加算金の割合は、市中金利と比べ若干高い状況が続いていたため、

ひと昔前は、これを理由にあえて中間納付などを多く収め、

還付加算金を得ようとする動きも散見されたようです。

これは、以前は中間申告は、①前年度の実績の1/2(前年度実績)と、

②その事業年度開始の日以後6月の期間を1事業年度とみなして計算する方法(仮決算)の

いずれかが認められており、後者を採用することで中間納付を多く収めることが可能でしたが、

平成23年税制改正により、前年度実績を超える仮決算での中間申告は出来ないこととされました。

還付加算金を一種の金融商品のように捉え、あえてこれを狙うような会社は

少なくとも私が関与させて頂いた中では聞いたことがありませんでしたが、

上記の改正により、現状は基本的にそのような行為は出来ないルールとされています。

源泉所得税の納付が遅れた場合

前々回の加算税の記事では割愛しましたが、

源泉所得税の納付が遅れた場合には、不納付加算税という加算税が課されます。

不納付加算税の税率は、大まかに以下の通りとされています。

税率
法定納期限内に納付がなかったことについて
正当な理由があると認められる場合など
不適用
自主納付(調査通知前)5%
上記以外10%

源泉所得税は基本的に(徴収した月の)翌月10日までに納付する必要があり、

この期限に遅れると、不納付加算税が課されることになります。

なお、源泉所得税の納付遅れには、不納付加算税に加え、利息相当である延滞税も課されます。

納付が遅れたことに対して二重でペナルティが課されているような気もしてしまいますが、

源泉所得税は申告が求められるものでないため、不納付加算税はあくまで

納期限までに納付しなかった事実に対するペナルティとして、

利息相当である延滞税とは別に設定されているものと考えて頂ければ良いのかと思います。

源泉所得税の納付は、毎月のルーティンとして処理している場合は

納付が漏れることは少ないかもしれませんが、

創業して間がなくオペレーションが定めっていないような場合など、

納付が漏れてしまっているケースが散見される印象ですので、

実務上の一つの留意ポイントとして、気を付けて頂ければと思います。

※本記事は投稿日現在の法令等に基づき記載しております。なお、記事の内容に関するご質問等は受け付けておりませんのでご了承下さい。


【編集後記】

非正規社員の退職金なしや、アルバイトの賞与が認められないなどの判例が出たことが話題となっています。この判例に関する詳細な事実関係までは把握していないものの、日本は正規社員が非常に優遇されている社会であることを、実際に会社を辞めてみて痛感することが多いです。これから働き方が益々多様化していくことが想定される中、時代の変化に合わせた国や企業の柔軟な対応を期待したいものです。