税務調査シリーズ⑥ ~ 税務署からのお尋ね
税務調査ではないものの、簡易的なものとして国税局や税務署などからお尋ねが来る場合があります。
消費税還付申告のお尋ね
まず、実務上良く対応するものとして、消費税還付申告のお尋ねというものがあります。
これは名前の通り、消費税の還付申告をした場合に、申告書の記載だけでは分からない
詳細な内容を確認するものとなっています。
還付申告の内容にもよりますが、基本的には以下資料の提出を求められることが多いです。
- 勘定科目別消費税課非区分表
- 輸出免税売上の明細(インボイス、契約書、元帳など)
- 主な仕入の内容(インボイス、契約書など)
還付申告の場合、国としてはお金が出ていくこととなるため、
申告内容が適切なものか、返金(還付)してしまう前の手続きとして
確認しておきたいということかと思います。
ただし、還付申告をした全ての会社にこのお尋ね通知が届く訳ではありません。
どのように対象会社が選ばれているのかは分かりませんが、
毎年同じ事業(取引)内容や、還付の額が大きくないにも関わらず、
毎年同じような内容が聞かれる会社もあれば、特に何も聞かれず還付される場合もあったりはします。
ただ、初めて還付申告をする会社の場合には、
経験上、お尋ね通知が届くケースがほとんどではないかと思います。
以前は還付申告の場合でも、納付申告と特段提出書類は変わらなかったものの、
現在は還付申告の場合には、「消費税の還付申告に関する明細書」
というものを併せて提出しなければなりません。
(これにより消費税のお尋ねが減ったかと言えば、正直あまり変わらないような気がしていますが。。)
税務担当者からすれば、わざわざこの明細まで作成して提出しているのに、
通常業務で忙しい中、この還付のお尋ねに対して
どこまで真面目に対応しなければならないのか、
対応する必要があるのかと思われる方もいるかもしれません。
これはあくまで行政指導の一環であるため、正直なところ、
依頼されている資料を全て準備しなくても、口頭説明で済ましたり、
交渉によって提出資料を限定的にすることは出来ると思います。
実際、経験上すべてを真面目に準備したことの方が少ないような気がします。
ただ、残念ながらこの還付のお尋ねに対応しないと、税務署は還付手続きを進めてくれないようです。
(経験上は少なくとも対応前に還付してくれたケースはありませんでした)
場合によっては還付額が大きくなることもあるかと思いますので、
会社からすると出来るだけ早く還付してもらいたいケースも多いかと思います。
無視はできないものの、全てを真面目に対応する必要はないかと思うので、
必要に応じて税理士と相談の上、クイックに対応出来る範囲で
対応してしまうのが良いかと思います。
税務署(国税局)からの照会
消費税の還付のお尋ねは基本的に書面で通知が来るのに対し、
法人税申告内容に関する照会が口頭で行われることがあります。
今年はコロナの影響で実質的に現場での税務調査が中断されていたこともあるせいか、
この照会がやたらと多く、さらに通常は多くて3個程度の質問事項である場合が多いものの、
今年に関しては20個程度照会を受けるケースもありました。
これも建付けとしてはあくまで行政指導の一環とのことなので、
仮に対応しなかったとしても、実質的に大きな問題はないのかもしれませんが、
あまり無視し続けてしまうと、何かあるのでは、と思われて
税務調査のきっかけになることもあるかもしれませんので、
対応出来る部分は必要最低限の対応はしておく必要はあるかと思います。
地方税の税務調査
国税だけでなく、地方税についても照会があることがあります。
また、地方税についても税務調査が行われることはあります。
ただ、その頻度は国税調査程ではなく、基本的には、事業税の外形標準課税、
稀に事業所税、償却資産申告の調査が行われることがある程度かと思います。
地方税についてはその計算過程がそこまで複雑でないため、
照会や調査の場合にも特に構える必要はありませんが、
オフィスの移転があった場合などには、税目や課税団体(各自治体)によって
その取扱いが異なることもあり、慎重な確認が必要となるため留意が必要です。
また、外形標準課税のうち、資本割については単純なようで実は複雑な部分もあり、
間違えた場合の影響額が大きいこともあるため、純資産に異動があった場合や、
増資により新たに外形標準課税の対象法人になった場合には、
過去の純資産の異動も含めて確認するようにしましょう。
※本記事は投稿日現在の法令等に基づき記載しております。なお、記事の内容に関するご質問等は受け付けておりませんのでご了承下さい。
【編集後記】
Go To イートの錬金術が問題となっているとのことで、一定金額未満の場合は対象外とする方針のようです。なぜ制度設計時点で気づけなかったのかという思いもある一方、少しでも飲食業を盛り上げようとする中で、「ルール上は問題ない」として錬金術を使う人のモラルも少し残念と思ってしまいます。